金澤郊外にて・長持ちする櫻花のこと(近所の墓場の横)


金澤の櫻がいいなあ、と思うことは染井吉野に埋め尽くされていないこと。櫻坂を眺めていても、種類がまちまちで、色合いが楽しい。

ボクはよく云われるように染井吉野が人工的な品種であること、一斉に咲いて・一斉に散ることには違和感は感じていない。その生命力の線の細さに、美人薄命的な魅力を感じる。だから根元に埋まる屍体の連想は染井吉野じゃなくてはイケナイように思うのだ。ただ楽しむことができる開花時期がとても短いことが残念なだけ。

街中で最後まで楽しめる櫻花はボクの近所、墓場の横に咲く。昨年も黄金週まで咲いていたし、今年もそう。酔っ払って近所の酒場からの帰り路、薄暗い灯火のもとで咲くのを眺めている。

今日になって、ふと思ったのだけど、この櫻は八重櫻なのかなあ。ならば遅いことは当たり前なのだけど。色合いの淡い感じや、散った花びらの様子から八重櫻じゃないと勝手に思っていたのだけど。どうなのだろうか。そんなことを考えながら、ボクの金澤での観櫻の日々は幕を閉じる。